−　ｓｕｒｐｒｉｓｅ　−　（主人公Side）





　「よし　あとは零一さんが帰ってきてから仕上げね。」


大体の食事の準備を終え　わたしは一息ついた。
今日は　零一さんの部屋に　夕食を作りに来ていた。
零一さんはまだ　学校から帰ってきてない。

リビングの時計に目をやると　時刻は５時４５分を指していた。


（もうちょっとで帰ってくるかな・・・・・・）


時計から視線を外すと　グランドピアノが目に入る。


（弾いてみても・・・・・・いいかなぁ・・・・・・）


そう思いたったわたしは　ピアノの前に立つとそっとフタをあける。

わたしも　実は　ピアノを習っていた。
中学３年の秋　受験準備の為と言ってレッスンを中断し　結局
家の引っ越しもあったりして　そのまま習うのを止めてしまった
のだけれど。


（えーっと・・・・・・　最後の発表会で弾いた曲
あれなら　まだ　弾けるかな。）


記憶を頼りに　わたしは　とある曲を弾き始める。

零一さんの様な　難しい曲じゃないけれど。
わたしは　あのとき　一番気に入ってた曲で。
何度も何度も練習した曲。

久しぶりに触れる鍵盤は　少し冷たく感じて。
弾きながら　わたしはその冷たさに　何故か零一さんの
手の感触を思い出していた。


（うーん　４年ぶりじゃ　こんなものかな・・・・・・。）


タッチミスを繰り返しながら　なんとか一曲弾き終えたその時。
拍手が聞こえ　振り向くと　そこには零一さんが立っていた。


　「れっ・・・・・・零一さんっ！？」

　「ただいま　。」


やだ　わたし。ピアノを弾くのに夢中で　零一さんが帰ってきた
ことに全然気がつかなかった・・・・・・。


　「おかえりなさい・・・・・・いつからそこに？」

　「少し前だ。君はピアノが弾けるんだな。」

　「あっ　ごめんなさいっ！　わたし　勝手にピアノ・・・・・・」
　
　「いや　問題ない。だが正直なところ驚いた・・・・・・。」


わたしは急に恥ずかしくなってしまった。
あんな　下手くそな演奏を聞かれてしまった後だし。


　「はい。中学まで習ってたんです。でも４年ぶりに弾いたから　全然指が
　動かなくて・・・・・・。」
　
　「そうか・・・・・・。」

　「まさか聞かれるとは思ってなかったから　恥ずかしいです・・・・・・。」

　「そんなことはない・・・・・・。また　弾きたくなったら　いつでも弾けば
　いい。家のピアノはいつ弾いても構わない。」

　「ありがとうございます　零一さん。でもわたし・・・・・・。」

　「どうした？」


わたしは　気を取り直して　零一さんに言った。


　「わたし　零一さんのピアノを聞いている方が好きです！」

　「・・・・・・そうか。」

　「お食事の後で　一曲弾いてくれませんか？」
　
　「あ・・・・・・ああ　わかった。」


零一さんのこんな優しい表情を見られるのは　わたしだけだと
思っていてもいいよね？


　「さ　夕食にしましょ？　今日のメニューは・・・・・・」





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誕生日企画SS『Birthday』のその後みたいな感じで。


実は管理人も主人公ちゃんと同じで　中学３年までピアノ習って
いたのです〜（笑）
高校に入って　いろいろと忙しくなってしまったので　通わなく
なってそのまま止めちゃったんですけどね（汗）

今思えば　もうちょっと頑張っておけばよかったかな〜と。
管理人　みんな中途半端なんですよ〜（滝汗）

主人公ちゃんが弾いた曲については『氷室Side』にて追記して
おきますね。


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