−　ｓｕｒｐｒｉｓｅ　−　（氷室Side）





部屋の明かりが点いている・・・・・・。
誰かの待つ部屋に帰るなんて　何年ぶりだろう？

なにか　くすぐったいような　そんな不思議な感覚に囚われながら
俺は部屋のドアを開ける。

と同時に　リビングの方からピアノの音が聞こえてきた。

玄関には　の靴。
ということは　彼女がピアノを弾いているのか？

俺はドアを後ろ手で閉めて部屋に入り　そっとリビングの様子を伺う。
やはり　がピアノを弾いていた。

がピアノを弾くとは　聞いていなかった。
だが　よく思い出してみると　彼女が吹奏楽部に入部してきた時
フルートは初めてだと言っていたが　教えなくてもすぐに楽譜は読めて
いた。そう考えれば　彼女がピアノを弾くことに何の不思議もない。

俺はの真剣な横顔を見ながら　演奏に耳を傾ける。


（この曲は・・・・・・　たしかオースティンか）


ハッキリ言って　練習不足は否めない。
しかし　彼女はきちんと曲のイメージを掴んで演奏している。

全く・・・・・・　俺は君に驚かされてばかりだ。
まだまだ俺の知らない君がたくさんあるのだろう。

やがて　曲は終わった。
俺は演奏を終えた彼女に惜しみない拍手を贈る。


　「れっ・・・・・・零一さんっ！？」

　「ただいま　。」

　「おかえりなさい・・・・・・いつからそこに？」

　「少し前だ。君はピアノが弾けるんだな。」

　「あっ　ごめんなさいっ！　わたし　勝手にピアノ・・・・・・」
　
　「いや　問題ない。だが正直なところ驚いた・・・・・・。」

　「はい。中学まで習ってたんです。でも４年ぶりに弾いたから　全然指が
　動かなくて・・・・・・。」
　
　「そうか・・・・・・。」

　「まさか聞かれるとは思ってなかったから　恥ずかしいです・・・・・・。」

　「そんなことはない・・・・・・。また　弾きたくなったら　いつでも弾けば
　いい。家のピアノはいつ弾いても構わない。」
　
　「ありがとうございます　零一さん。でもわたし・・・・・・。」
　
　「どうした？」


が　とびきりの笑顔でこう言った。


　「わたし　零一さんのピアノを聞いている方が好きです！」

　「・・・・・・そうか。」
　
　「お食事の後で　一曲弾いてくれませんか？」

　「あ・・・・・・ああ　わかった。」


俺は最近　のこの笑顔にすっかり弱くなっている気がするが・・・・・・
まあ　それもいいだろう。


　「さ　夕食にしましょ？　今日のメニューは・・・・・・」





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はい。『氷室Side』でした。
せんせぇ「練習不足は否めない」ってきびしぃご意見（ごもっとも）。
でもそれを口に出さないのは　主人公ちゃんに気を遣ってる？
（そうじゃなくって・・・・・・）

他の素敵サイト様で　SSのピアノネタというと　リストの曲とか
エリック・サティの曲ネタが多いので　敢えてその辺は外して
みました。

ちなみに　主人公ちゃんが弾いている曲はオースティン作曲の
「アルプスの夕映え」という曲です。
この曲　本当に管理人が中学の時に発表会で弾いた曲です（苦笑）。

余談ついでに・・・・・・
管理人（主人公ちゃん？）のピアノの腕前は「初級上」です。
せんせぇは「上級」ということで・・・・・・。
ピアノピースのランク分けで見たら　リストの曲（ため息とかね）
は「E（上級）」で　私が弾いていた曲は「B（初級上)」なのでした。


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