俺とアイツ





俺と零一は　小学校の頃からのつきあいだ。
俺と零一は性格が全く違うが　何故かつきあいは長い。
アイツは融通が利かないところがあるが　イイ奴だ。
一言で言えば　不器用なヤツなんだろう。
そんな零一を俺はとても気に入っている。

零一は昔からピアノを弾いている。
アイツが自分を解放できる数少ない場所がピアノの前である
ことも俺は知っている。


俺の店にはピアノが置いてある。
アイツはだいたい週末に店にやってくる。
そして時々　俺の店のピアノを弾いていく。

（いや　正確には俺が「弾いてくれ」とリクエストを
　しているんだけどな）

アイツは「全く・・・　俺は客だぞ？」と悪態つきながらも
いつも俺の期待に応えてくれる。


なので　今夜　零一が


　「ピアノを弾いても構わないか？」


と自分から言い出してきたのには　ちょっと驚いた。


　「お？　珍しいなぁ。零一が自分から言い出すなんて」

　「・・・・・・。」

　「ホラよ」


俺はピアノの鍵を零一に投げて渡す。
零一は鍵を受け取ると　ピアノの前に立ち　セッティングを
し始めた。そして曲を弾き始める。


（お　今日はクラシックか？）


あれは多分・・・・・・
アイツがいつも好んで弾いているリストの曲だろう。
心地よいピアノの旋律が　店内に響き渡る。


長年　零一のピアノを聞いている俺だけど　最近アイツの
ピアノの音色は　どこか変わったような気がする。

音色のひとつひとつに深みが増したというか・・・・・・
・・・・・・そうだな。例えて言えば・・・・・・

誰か特定の人を想って弾いているような・・・・・


（！　ついに　零一にも春が来たか？）


曲が終わった。店内にいた他の客からも拍手があがる。
カウンター席に戻ってきた零一に　ウイスキーを出して
やりながら俺は聞いてみた。


　「なぁ　零一。オマエ　好きな女でも出来たのか？」

　「なっ・・・・・・」


俺にそう言われて　零一の表情が一瞬固まった。

（オイオイ　ビンゴかよ・・・・・・）

零一は冷静を装っているが　俺の目はごまかせない。
アイツは明らかに動揺している。

俺はそんな零一を　何故だかカワイイヤツだと思ってしまった。
そうなるととことん零一をからかいたくなってしまった。
俺の悪い癖かも知れないが　今日は許してもらおう。


　「それで？　どんな女なんだ？」

　「・・・・・・いるとは一言もいっていない」

　「ハハハハハ！　今度ウチの店に連れて来いよっ？」

　「うるさいっ　お前には関係ない」


そしてそれから数日後・・・・・・
零一はカノジョを連れてこの店に現れることになるんだが。

零一をそんなに動揺させるほどの女が
１１歳も年下の　それも零一の教え子だったとは
あの時の俺でも　さすがに思いつかなかったな。


　「まぁ　今日は俺のおごりだ　飲めよ」



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マスター降臨（笑）
マスターモノは書けないと思っていたのに降りてきたら後は
一気に書いてしまいました（相変わらず駄文ですが・・・：涙）。
（ゲーム中の）マスターの出番　もっとキボーン♪

時期としては　秋　スチルイベントの直前のお話です。
どうやら私は　せんせぇを狼狽させるのが好きみたいです（苦笑）


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