Ｘｍａｓのないしょ話し


「こんばんは」…と言ってお店のドアをあけると
マスターさんがいつも通りの笑顔で出迎えてくれた｡

「零一はまだ学校のパーティーなの？」

「はい、一応９時には終るはずなんですけど
今年も延びてるんですね」

「こんなに可愛い彼女をイブに一人にするなんて
あいつも馬鹿だな」

「仕方ないですよ､お仕事なんですから」

…とは言ってみたものの、
多分女子高生に囲まれてるだろう零一さんを思うと
ちょっと心が痛いんだ｡
去年までは私もその中にいたのになぁ。

「ほら、そんな顔しないでコレでも飲みなよ」

マスターさんがカウンター越しに
グレープフルーツジュースを出してくれる。
私って考えがすぐ顔に出るから
大人な彼にはすっかりお見通しなんだろう｡
気を付けないとダメだなっていつも思っているのに｡

「さて、じゃあ、あいつが来るまで昔話でもする？」

「え？いいんですか？」

「もちろんだよ、あいつが一緒だと絶対に話しを
させてくれないからな、今が最高のチャンスだ」

「じゃあ私､零一さんの中学生の頃の話しを聞きたいです」

「中学生？ＯＫ、いいよ。。。そうだなぁ」と言って
マスターさんは少し考え込んだ｡

「そうだ、あいつがイジメにあった話しをしよう」

「い、イジメですか！？零一さんが？」

「ああ、あいつはあの通り曲がった事が大嫌いだろ？
でっ、同じクラスのやつがイジメられてるのを黙って見てられなくてさぁ、
《恥かしくないのかっ》とか思いっきりいじめっ子に怒鳴りつけたんだ。
それで標的チェンジでね、そりゃあもう登校拒否したくなるような
激しいイジメられっぷりだったそうだよ」

「。。。そうだよ…ってマスターさん知らなかったんですか？」

「ああ、その時はクラスが別でね､あいつ何も言わないから
全く気がつかなかった…思えば迂闊だったよなぁ」

「零一さんにそんな事があったんだ…」

「あっ、でも全然大丈夫、
俺がイジメに気付いて一応心配して色々聞いてやったのに
あいつときたら《俺は何一つ悪くない》って平然としてるんだから。
でもまあ、しんどかっただろう…とは思うけどね」

「それでどうしたんですか？」

「まあ単純なシカト位なら俺も黙ってたんだけどさ
結構暴力が入ってきて…ヤバイ感じになったんだよ。
とにかくあいつ強情だから、相手もムキになっちまって
とうとう呼び出し…って言うか待ち伏せされたんだ…。
でっまあ、ソレを知ってて知らん顔も出来ないからね、
俺がその場所に先に行って、全員ぶちのめしといたの」

「。。。。。。マスターさんが？全員を？」

「そう、これでも空手やってるからね」

「空手ですか？？？なんかイメージ変わりそう」

私はびっくりしてマスターさんの顔を見つめた｡
うーん、人は見かけによらない…ってコト？

「…でも零一さん、その場合助けて貰っても
ありがとうって言わなかった気がします｡｡｡」

「ははは、さすがに恋人だね､大正解だ。
せっかく人が頑張って助けてやったのに
《暴力は人として最低だ》とか言って怒るんだぜ｡
しかも空手を使っての喧嘩は犯罪だ…とまで言いやがった」

「は、犯罪ですか！？」

「そうだよ、ひどいだろ？」

「。。。はぁ、なんと言うか彼らしいです」

「まあそれでイジメが収まったんだし、少しは感謝して欲しいよなぁ」

「そうですね」って答えて私は笑った｡

でもきっと零一さんはすごく感謝しているはずだし、
マスターさんにも、ソレはわかっているんだよね。

「そんな幼馴染がいて羨ましいです、
お２人はホントに仲良いですし…」
私はジュースを口に含んでしみじみと言った｡

「うーん、そうだね、今は大切な友人だけどねぇ、
その時はまだちょっと違ってたな。。。」

「友達じゃなかったんですか？だったらなんで
喧嘩してまで助けたんです？」

「そうだな。。。これは絶対秘密だけど…」って
マスターさんがわざわざ声を低くして告げた言葉は｡｡｡

「あいつをイジメてイイのは 《俺だけ》 なんだ、わかった？」





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素敵サイト『愛しのひむろっち』（管理人・たまごんサマ）
から強奪してきたクリスマス企画ＳＳです。

マスターさんがいい味出してます♪
「あいつをイジメてイイのは俺だけ」なんて・・・・・・　くぅ〜！　ツボです！！
はばチャ冬号をお読みになった方なら　もうお分かりですよね？

たまごんさん　素敵ＳＳをフリーにして頂き　ありがとうございました。


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