すきま風





零一が店の開店前に来るなんてめずらしい
なんだか今日はそわそわしてるが、どうしたんだろうか？
そういえばいつものあの子は一緒じゃないのか？

俺は零一があまりにも落ち着きがないのを見て

　　「おい、久しぶりにデュオでもするか？」
　　「だが、もう開店間際ではないのか？」
　　「いいだろう、たまには一緒にやるのもサ」
　　「まあ、そうだな・・」

俺はサックスを奥に取りに行き、
零一はグランドピアノを開ける

俺達は合図をするまでもなく「酒と薔薇の日々」の演奏をはじめた
俺は最近あまり弾いてなかったせいか、少しなまってるようだ
零一はあいかわらず、クールにピアノを叩く

ピアノとサックスだけのデュオ・・・
ちょっと寂しい気もするだろうが、それはそれでなかなか良いもんだ

　　演奏をはじめたら零一も少し落ち着いたみたいだな



・・・カラン、カラ〜ン・・・

もう客か？早いなぁ
と思いつつ演奏をやめ入り口方向を見ると

　　「こんにちは、マスターさん！」

　　「やあ、いらっしゃい。今日は早いね」
　　「はい。零一さんからここに１７時って呼び出されたので
　　　あっ、もしかして開店前だったんですか？　すみません私・・」
　　「いや、大丈夫だよ」

そう言うとニッコリ笑って、彼女はピアノにいる零一の方に向かった
アイツ、あの笑顔に惚れたんだろうな。。

零一はこっちを見ながら、何やら咳払いをしてる
どうしたんだ？
俺の脳裏に「もしや・・」の予感が走った

　　「零一、胡椒を切らしてるみたいだから、俺ちょっと買いに行ってくる
　　　その間、店番頼んでいいか？一応、看板は準備中にしておくから」
　　「わかった」

俺は上着を着て、ドアに向かった
零一の手元に赤い小箱がチラっと見えた

　　あぁ、やっぱり・・・

俺の予感は的中した

と思う気持ちの反面、なんだかちょっと心にすきま風が吹いたような気もした
俺は外に出て、看板を「準備中」に戻し
そして、切れてもいない「胡椒」を買いに行った

　　・・・零一、がんばれよ・・・







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素敵サイト『守村桜弥ふぁんくらヴ』（管理人・中村不二子さま）
からイラスト付きで強奪してきました。

マスターさんの　何とも言えないこの心情に・・・・・・萌え（はぁと）。
不二子さん　素敵ＳＳとイラストを快く下さって
有り難うございました〜♪

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