あいつの店ではささやかなパーティーが始まっていた。

俺が来る事が判っていたとはいえ、また今年もピアノを弾かされるとは…。

カウンターの彼女が気になったがあいつが傍にいるから安心だろう。

横目でちらちらと気にしつつ、俺は一曲弾き終わって席へと戻っていく。
すると、さっきまで此処にいたはずの彼女がいない。

「おい、零一どうした？ちゃんなら化粧室だよ。心配しなくても大丈夫だって。」
カクテルグラスを片付けながらあいつは笑っている。

「まさかと思うが、彼女に酒を飲ませたんじゃないだろうな？？」
しれっとしながら
「ちょっとだけだって、ほら、寒いところで待たされていたんだろう？寒かったって言うからさ…。」
全て言い終わらないうちに彼女が席に戻ってきたが、どうも様子がおかしい。

「せんせぇ、なんだかふわふわするんですけど〜…。」
よろめいて倒れこんでくる彼女を支えると、目の前から立ち去ろうとしている悪友が目に入った。
「何を飲ませたんだ？全く。」
「いや〜、まさか一杯で酔う子がいるなんてね〜、すまんな零一。今日はもう帰りな。」
何か隠しているようだったが、彼女の事が優先だと思い、その日は帰ることにした。

タクシーを拾おうと暫らく路上で待っていると、彼女が寄りかかったまま呟いた。

「せんせぇ、今日帰りたくない…。ダメ…ですか。」
「な、何を…」
「せんせぇは何時だって私のこと、子供扱いして。もう大人だもん、お酒だって飲めるもん。マスターさんに何時までたっても教師と生徒みたいに呼び合ってるんだねって言われて…私、私…」

いつの間にか目に涙を浮かべて訴える彼女にかえす言葉が見つからない。
子供扱いしていた訳ではない…。
君の心も体も全て俺のものにしたいと何度思った事だろう。

君を滅茶苦茶にしてしまいそうな己の欲望が怖かった

ただそれだけのことなのに、そんな風に不安を抱かせていたなんて


無言のままタクシーに乗るとマンションへと向かった。


部屋に入ると酔いが少し醒めたのだろう、何も言わない俺を不安そうに見上げている。

俺は部屋の明かりも点けないまま彼女を抱きしめると額にそっと口付ける。

「いいんだな、今夜は帰さなくて…。」
少し掠れた声で呟くように言うと彼女は腕の中でわずかに頷いた。

俯いた顔を上げさせ柔らかい唇を貪るように口付ける。
途中息を吸おうとわずかに口を開いた時にすっと舌を滑り込ませ彼女の舌に絡ませた。

いつもより激しく深いキスに立っていられないのか、ギュッとしがみついてくる。

その仕草も、時々もれてくる艶っぽい吐息も何もかもが愛しくてたまらない。

唇を離すと潤んだ瞳で見上げられて、わずかに残っていた理性の箍は一気に外れてしまった。

コートを脱ぎ捨て彼女を抱き上げるとそのまま寝室へと連れて行った…。

そっとベッドに横たえると髪に瞼に唇にキスの雨を降らせ、服の上から柔らかな膨らみに触れると唇から吐息が漏れる。

もっとその温もりに触れていたくて着ている物を全て取り去ると、薄暗い部屋の中に白い肌がくっきりと浮かび上がる。

俺の視線を感じて恥ずかしそうに身をよじる彼女の手を掴みこちらを向かせると、のけぞる首筋に、柔らかな膨らみにすべらかな腿にも溺れるようにのめりこみ幾つもの花を咲かせる。

抱きしめれば壊れてしまうのではないかと思われる細い体を彷徨うように唇と指が這えば、悩ましく乱れるその姿にいつものあどけなさはなくもう十分大人だと言っていた君の言葉を思い出した。

いったいどれだけ俺を惑わせるのだろう。

滑らかな肌と温もりを全身で感じながら俺の名前をうわごとのように呼ぶ彼女を抱きしめ高みへと登りつめた。


甘い声も君の香りも俺を酔わせて狂わせる。



今夜はもう君を離すことなんて出来ないだろう。



最高のクリスマスの夜を君と共に…。