バースデー・プレゼント
ベットでまどろんでいるを一人残し、先にシャワーを浴びる。
勢いよく流れるシャワーで浴室に湯気が充満した。
……自分の身体に取り巻いているの匂いが……
……その湯気に乗って顔の方へ立ちのぼる。
その瞬間、たった今までをこの腕の中で抱きしめていたというのに、
一度果てたその部分は、また微熱を帯びて反応しだす。
フッ……。俺はいくつになったんだ？
これではまるで、覚えたての若者のようではないか。
……もう彼女を送っていかねばならない。
いくら婚約しているからといって、相手のご両親に心配かけるようなことはできない。
気持ちに踏ん切りをつけるように温度を高めに設定し、シャワーを頭から浴びた。
バスローブを羽織り、部屋を覗くと、まだは同じ体勢でいる。
……寝入ってしまったようだな。
キッチンへ行き、冷蔵庫に冷やしてあったミネラルウォーターをその場で一口飲み、
ボトルを持ったまま、ベッドルームに戻る。
「………前に運動が苦手だって言ってましたよね。」
「なんだ？起きたのか。……どうした、突然。」
はシーツに包まったまま、こちらの方へ身体を横に向けた。
「どうしてそんなに身体が引き締まっているんですか？
……わたし、この頃別に体重が増えた訳でもないのに、
いろんなとこに肉がついたみたいで……。この辺とか……。
ダイエットしたほうがいいのかなぁ。」
シーツを捲り、腰の辺りに手を当て揉み出すかのようにさする。
………確かに、以前に比べ、身体に丸みが付いてきた様に思う。
肌も瑞々しいのに、しっとりしていて、吸い付くようだ。
胸も………、
露わになったの胸に視線を落とすと、
先程まで自分の下で揺れていた、ピンク色に染まる緊張した突起を思い出し……、
恍惚とした表情を思い出し……、気持ちがまた高ぶり始める。
「……コホン、…それはつまり、女性らしくふっくらしてきた、という訳ではないのか。」
窓際のほうに周り、に背を向けたままベッドに腰を下ろすと、
手に持ったままの、ミネラルウォーターで喉を潤す。
……ふぅ。また火照りはじめる身体の中を冷たい水が流れていくのがわかる。
少し落ち着きを取り戻し、の方へ顔を向けた。
まだ納得のいかない様子で、うつ伏せになり頬杖をついている。
「……いつまでもそのような格好をしていると、風邪を引く。
君もシャワーを浴びてきなさい。
そろそろ送っていかなければ。」
「……好きなタイプって、女子生徒なんですよね……。
もう『女性』になったわたしになんて、興味なくなったんじゃないですか…？」
……また、ずいぶん昔のことを。
がまだ私の生徒だった頃、『好きなタイプは？』と聞かれ、
『向学心旺盛な生徒』と答えたことがある。
……しかし、それはが生徒だったからそう答えた訳で…。
まさか今になって、そのようなことを持ち出してくるとは。
「その頃、君が私の生徒だったからそう言ったまでだ。」
「じゃあ、今好きなタイプはどういう人ですか？」
……何を言い出すんだ、この娘は。
もう付き合い始めて、２年以上が過ぎようとしているのに。
駄目だ…。今のを、全く理解できない。
もう一口飲もうと思い、サイドテーブルに置いたボトルに手を伸ばすと、
その場所に何か違和感を感じた。
………？、この何も入っていないグラスはなんだ？
……！！そういえば、コレに入っていたバーボンがない！！
……まさか……。
振り向き、の肩を抱くと、口元に自分の鼻を近づけた。
「あ…ん、せんせぇ、痛いですぅ。」
「。ここに入っていたバーボンを飲んだのか？！」
「あぁ…。飲みましたよ。だって喉渇いちゃって。
身体は動かないし、起きたらせんせぇ、居ないんだもん。
氷は溶けてたし、もう薄まってましたよぉ。」
はあんなの大したことない、とでも言いたげな表情。
しまった……。何故置きっぱなしにしてしまったのだろう。
頭をかかえ、ため息を吐く。
「あ、せんせぇ！わたし、酔ってなんかいませんよ！
これくらいじゃ酔いません。」
……確かには、いきつけのＢａｒで飲んでもまったくと言っていいほど、酔うことはない。
俺たちに付き合ってストレートで飲むこともザラだ。
しかし何故か、俺の家で飲むと、途端に酔いが早く回る。
が言うには『ここだと眠っちゃってもいいし、安心感が違うから』らしい。
「ねぇ、せんせぇ！どういうタイプが好きなんですか？」
……普段名前で呼ぶのに、『先生』と呼ぶこと自体、酔っている証拠だ。
は未だ裸身のまま、トロンとした瞳で俺を見つめている。
……疲れていると、酔いが回り易いとはいうが………、
……なるほど、確かに体力は消耗しているだろう。
は尚もしつこく質問を繰り返す。
「せんせぇ！ねぇ……、もう…生徒じゃないわたしになんて興味ないんでしょう？」
「……そんなくだらない質問などせず、シャワーを浴びに行こう。
頭もすっきりする。」
身体を起こそうと腕を伸ばすと、はそれを撥ね退け、シーツに包まり背を向けた。
「やだ！質問に答えてくんなきゃやだ！」
……今までこんな酔い方をしたを見たことがない。
普段は……、そう、いつもより更に饒舌になり、笑顔が曇ることがない。
そして、俺に寄り添って、小さいあくび一つすると、
『零一さん、ちょっと目を瞑っていい？』と聞き、俺の腕の中に収まり、
ちょっとどころか、ほんとに眠り込んでしまう。
目を覚ましたは決まって『またせっかくの時間を無駄にしちゃった』と言うが、
そんなことは全くない。
俺の腕の中であどけない表情のまま眠り込んでいるをゆっくり見ることができたし、
この顔、この身体、全てが俺だけのものなのだという優越感が湧いてくる。
気づいていないかもしれないが、その姿がたまらなく愛しくなって思わずくちづけをした時、
必ずと言っていいほど、は柔らかい笑みを返してくる。
が眠ってしまった時は大抵、そのままデートはお開きとなり、彼女を家まで送る。
俺も男だ。を抱きたい気持ちがない訳ではない。
しかし、『大人の理性』が働いて、酔っているを勢いで抱いたことはない。
と飲むのは楽しい。普段はどことなくかしこまっているのに、
饒舌になると、普段のが垣間見えるから。
大学では友達とこんな感じで話しているのか、と、歳の差が少し縮まった気がしてくる。
しかし、今日は俺の誕生日。
は『いつも寝てしまうから、わたしは飲みません。あ、でも、零一さんは楽しんでくださいね』
と、一滴も酒を口にしなかった。
楽しい夕宴のあと、どちらともなく自然に抱き合った。
そして、今−−−−−。
どうしたものか。はまだブツブツ言っている。
フッ……まったく……、困った娘だ。
シーツに包まったままのを腕に抱きかかえた。
「キャ」
突然のことには目を見開いている。
「好きなタイプは……だ。……いや、俺が愛する女性、と言った方がいいだろう。
………納得したか？」
「せんせぇ………」
俺を見上げうれしそうに呟くと、俺の首に腕を絡ませ、からくちづけてきた。
のくちびるから流れ込むバーボンの味した吐息を受け止め、舌を絡ませる。
「ん…ん……っ」
零一はに覆いかぶさるように、更に舌を、唾液を絡ませ、
そのままベッドになだれ込んだ。
耳元、首すじ、鎖骨へとくちづけのネックレスを綴り、
先ほどから気になっていた白く弾力のある胸へとくちびるを這わす。
「は…あ…っ、……せん…せ……」
今までこの時に『先生』と呼ばれたことがない。
してはいけないことをしている様な………、罪悪感が頭をもたげる。
「…。俺はもう、君の教師では……ない……。」
「あ…っ、そういえば……どう…してだ……ろう……、あん…っ、せ…んせいだ…なん…てっ」
一度頂点に達しているの身体は、僅かなことにも敏感に反応する。
このままこうしていたいのもやまやまだが……。
の肌の上を滑らせていたくちびるを離し、身体を起こす。
「君は酔っているんだ。…さあ、一緒にシャワーを浴びよう。
もう、今日が終わってしまう。急がなければ。」
の背中を両腕で抱きしめるともう一度軽くキスをし、抱え上げ、バスルームへと向かう。
「零一さん、急ぐって、何かあるんですか？」
不思議そうに俺を見つめる。
「君を今日中に送り届けないとならないだろう。」
「？言いませんでしたっけ？今日、家には泊まるって言ってきましたよ。」
「そうなのか？！……しかし、いいのか？」
「零一さん、わたしもうすぐ２１ですよ。それに婚約してるのに、反対も何もないでしょう？
あ、ただし、羽目を外さないようにって。」
羽目……か。すでに外しかけていたな……。
「だから、今日はゆっくり零一さんの隣で眠れます。」
うふふと俺の腕の中でうれしそうに笑う。
「……いや、今日はまだ君を寝かせられない。
まだ、からのとっておきのプレゼントを貰っていないからな。」
そのまま、くるりと向きをかえると零一はベッドルームに戻った。
Ｆｉｎ．
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素敵サイト『2222 PICNIC』
（管理人・木の実ナナコさま・現在はサイト名を変更されてます）
から強奪してきた氷室先生のお誕生日企画ＳＳです。
１８禁ものです。私はこの素敵ＳＳの為に裏部屋作りました♪
主人公ちゃん 酔ってます〜♪ プレゼントは私状態になってます〜♪
せんせぇに「まだ君を寝かせられない」って私も言ってもらいたい〜！
私には書けない大人の世界を堪能させて頂きました（はぁと）
ナナコさん 素敵ＳＳをありがとうございました♪
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